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看護侍

看護侍

声優さんインタビュー その1

金原はスタートレックのファンです。
が、
最近は気分も盛り上がらず。
デアゴスティーニあたりが週刊スタートレックを出しても、
目を見張るものは何も得られず。

でも、お小遣いを貯めて、
新スタートレックを買おうかなという野望達成のため、
モチベーションのアップのため、
以下のスタートレックの主人公の吹き替えをやった
声優さんのインタビューをコピペ。
インタビューの岸川氏は、
外国テレビドラマを中心に研究評論している人物です。

岸川 
皆さん、よろしくお願いします。今日は歴代スタートレックの番組中で、艦長、船長、司令官の声の出演をされた5人の役者さんの方々にお集まりいただきました。よろしくお願いいたします。

一同 
よろしく。

岸川 
まずそれぞれのキャラクターのお名前と、どういうキャラクターだったかのご説明をお願いします。

矢島
エンタープライズの艦長あるいは船長カークの矢島正明です。
カークのキャラクターは、何と言ってもシャープさと温かさの二つをきちんと演じることができればいいと思いながらやっていました。

麦人
ピカード艦長をやりました、麦人です。
ピカードをやるにあたって、自分で考えてこういう役にしようと思ったことは、ヒューマンな人間として演じられたらいいということでした。完璧な人間ではなく、弱さも欠点も時々ポロッと出るような。そういう人間味を随所に生かせたらいいなということを考えながらやっていました。

玄田
ベンジャミン・シスコの玄田哲章です。冒頭で自分の奥さんが結果的に死んでしまうんですが、それを助けられなかったところから物語が始まります。これは『スタートレック』の今までとは違うシチュエーションだなと感じました。いわゆる統率者としてやっていくわけですが、なかなか自分が選ばれた者である、創設者であるといった実感がなくて、いつも不安で不安で仕方がない。初の黒人の司令官で、周りにはとにかくキャラクターの強い人たちがいっぱいいる。その中で支えられてどんどんどんどん成長していった。その辺のところに重きをおいて演じました。

松岡
キャスリン・ジェインウェイを演じました松岡洋子です。
初の女性艦長ということで、男性にはない温かさややわらかさ、クルーの中の母親的な存在という面を出せたらいいと思って演じました。

矢島
現在放映中の最新シリーズでありながら舞台としては22世紀という一番古いエンタープライズの艦長を務められている谷口さん。

谷口
ジョナサン・アーチャー役をやらせていただいております、谷口節です。
初めてバルカン人と遭遇してから相当時間がたち、初めてワープ航法ができるようになったエンタープライズに乗って初めてディープスペースに出ていく。未知の世界に初めて乗り込んでいくという魅力あふれる役をやらせていただいています。
何よりもおもしろいのは、バルカン人の副長のトゥポルとの関係です。いつも激高するなと言われて感情を抑えなければいけない。現代に一番近いので、まだまだ人間味がたくさんあるという船長を楽しくやらせていただいています。

岸川
この5人の方をお迎えして、今回はお送りさせていただきます。
今、谷口さんがバルカン人の副長トゥポルの話が出ました。それは、最初の「宇宙大作戦」でスポックという副長のキャラクターが、やはりバルカン人でした。見ている限り、個人的には、そのひな形のような気もします。
地球人というのはどうしても感情を優先してしまうから、副長には冷静な人がいいだろうということでしょう。アーチャーにも感情を優先してしまう側面があったので、「エンタープライズ」では、副長はバルカン人を抑え役としておいておこうということがあったのだと思います。
今ならバルカン人というのは論理を重んじて非常に冷静で感情は表に出さないというキャラクターで成り立っていますが、矢島さんが「宇宙大作戦」で初めて演じられた当時の放送資料を見ると「感情がないバルカン人」と書かれています。(一同笑)

岸川
感情がないんじゃなくてあるんだけど、内側に秘めているんですね。矢島さんが初めてスポックというキャラクターを見たとき、また、それを演じられた久松保夫さんはどのようにお感じになりましたか。

矢島
とにかくあの当時は、SF的なトレーニングは我々にない時代でした。本当に右も左もわからなくて、何だか変な男が出てきたなというのが最初の印象です。感情がないと言うけれども、感情なしでセリフを言うわけにはいかないだろう。だから、久松さんは、最初の1~2本は随分探りながら苦労なさっていたんじゃないでしょうか。僕はそういう印象で見ていました。

岸川
久松さんがやられたスポックや、吉澤久嘉さんとの、ブリッジでの3人のかけ合いが割とメインだったと思います。吉澤さんはものすごくヒューマンな熱血漢みたいなキャラクターで、ちょっと非情な命令があるとすぐ抗議したりしていました。久松さんのスポックは逆に、「でも、論理的に考えればそれが一番いいでしょう」と割と冷たく言う。カークはその2人の間で苦労をしているといった印象でした。

矢島
2人の間で右往左往するという形になりますね。

岸川
久松さん、吉澤さんというのは当時としてもかなりベテランだったと思います。矢島さんは当時30代で、「ナポレオン・ソロ」の後を受けての主役ということで、それなりにプレッシャーもあったと思います。いかがでしたか。

矢島
本当にプレッシャーだらけでした。とにかく当時の録音方式というのは、まだフィルム時代ですから、シネシンクロのテープレコーダーというものが発明され、フィルムのリールとテープレコーダーのリールがシンクロするように歯車がついているんです。それを同時にパッとスタートしていくわけです。だから、編集ができないというネックがありました。やってやれないことはなかったのでしょうが、テープそのものが非常に高価なものだったんじゃないかと思います。ですから、なるべく編集しない。
とにかくまだ1本勝負の時代でしたから、冷静に、我々は今どのような内容を持ったドラマをやっているかということよりも、どうやってこの映像についていくか、このセリフについていくかということで一生懸命な時代でした。ですから、終わってみてから「ああ、この話はこういう話だったか」ということを改めて納得するような形でした。納得できればまだいいほうですけれども、「おい、今日の話はどういう話だったんだ」というような笑い話があるくらいで、本当に探り探りでした。
マッコイをやられた吉澤さんは我々の先輩で戦争体験もあり、1回人生を終わらせてしまったようなところがあって、非常に寡黙な方でした。あの寡黙な方が、激情家というか、感情家である非常にホットなマッコイを演じる。スタジオでジッと黙っていらした方が、いきなり陽性の芝居をなさるわけです。そういう先輩たちの確固とした芝居に対する態度を見ていて、若い我々は本当に身が引き締まる思いでした。
久松さんもまた同様でした。久松さんも非常に寡黙でした。我々より2世代くらい上でいらっしゃいましたから、我々も敬して遠ざけていたところがありますし、久松さんもご自分の立場をご自分で理解なさって、なるべくしっかりと自分の立場をわきまえたお芝居のなさり方をなさっていたという印象でした。ただただ緊張してその先輩についていくのが、僕としては精いっぱいでした。

岸川
麦人さんは昔、「宇宙大作戦」を見てらしたということですが、具体的にいつごろ見たのか、どういう印象を持って見たのかについては覚えていらっしゃいますか。

麦人
いつごろになるんでしょう。僕がいくつのときになるんだろう。定かではないけれど。

岸川
昼間見たとか、夜中の再放送で見たとか。

麦人
いや、夜中は見ていないでしょう。

岸川
夕方の放送でしょうか。

麦人
夜は大体飲んでいましたから(笑)。今の若い人たちが見ると、随分アニメチックだなというか、リアリティーがない部分を感じるのかもしれないけれど、あの当時僕らが見ていたころは、CGがあったわけでもないし、正攻法にSFをつくっていたわけです。こちらの意識もそれに準じていたからそれほど違和感はありませんでした。今、細かいことは忘れてしまったけれど、「また来週見たいな」と思っていました。カークさんの大ファンでした。

矢島
だから、やっている当人よりもちょっと下の世代である麦人さんたちのほうが、ずっと素直に内容を受け取っていたんです。僕らは何かやはり、あの衣裳といい、セットといい、「荒唐無稽だな」「これは学芸会の延長じゃないか」というような気持ちが、最初は強かったんです。なかなかその世界に入っていけなかったという記憶があります。

岸川
今、若い視聴者の方が「宇宙大作戦」を初めて見ると、そういうチープなところが少し気になってしまうようです。逆に年配の人になると、それも味として楽しめるようです。基本的なドラマはよくできていると思います。

矢島
そうですね。だから、僕は、今になって一視聴者になっているわけです。自分の昔の、35年前の作品を見たりして、結構この内容はおもしろい、考えさせるものを持っているなと感じています。自分が持っている問題意識をしっかりと反映してくれるテーマがきちんとある。それを今さらながらに思っています。僕が当時思っていたよりもずっと深くて豊かな内容を持っているんだなと、愚かなことですが、つくづく最近になって感じています。

岸川
麦人さんは「宇宙大作戦」をテレビであらかじめご覧になってから「新スタートレック」のお話がきたことになります。そのとき、「新スタートレック」という名前と「宇宙大作戦」はイコールだというイメージはありましたか。

麦人
いや、なかったです。全く。僕は51話(TNG「守護神伝説」)から「新スタートレック」に参加したのですが、それまでは吉水慶さんがやっていました。突然話がきたものですから、「宇宙大作戦」とイコールするイメージは全然ないまま、参加しました。後で、これは「宇宙大作戦」の流れをくんでいる作品なんだということを知って、「ああ、そうだったんだ」という感じでした。

岸川
当時、東京では地上波ではやっていませんでした。

麦人
ええ、やっていませんでした。

岸川
CSだけでした。地方局ではやっていましたが、東京では見られなかったので、反応が全然わからないという感じでした。
吉水さんから交代されたという話が出ました。吉水さんはご家庭の事情で引退されたのですが、吉水さんのピカードは少し冷たい感じはあるけれど人間的にすごく完成された感じがしました。麦人さんがやられたピカードは、その後、第3・4シリーズの「ボーグ篇」や、お兄さんの家に行く話などで、割と人間的な弱さを見せたり、弱音を吐いたり、激高したりするキャラクターにシフトしていく、人間っぽさが増していく時期でした。
だから、見ているこちらとしては、2~3回見ると声の方が変わっても慣れて気にならなくなりました。でも、やられているほうとしては、例えばほかの方が1年やってきた作品を代わりに受け継ぐことに関してどのように思われましたか。

麦人
僕は吉水さんが艦長をやっているときに、2回くらいゲスト出演しているんです。すごい、得体の知れないような役で。

岸川
最初は、ターシャを殺してしまう宇宙人の役の声をやられていました。
(TNG第22話「悲しみの星に消えたターシャ」)

麦人
ええ。だから、吉水さんが急に引退することになって、急に僕になったときに言われたんです。「吉水さんのシリーズの回を何本か参考に見ますか」と言われたんだけど、それを見ちゃうとかえって自分の中で吉水さんが築き上げてきたものでがんじがらめになってしまう。それが嫌だから、「申しわけないけれど、僕は僕のピカードをつくらせてもらいたいから結構です」とお断りしました。ちょっと傲慢だったかもしれないけど、一切見ないで始めさせていただいんです。
自分の中では、きっとしばらくはあちこちいろいろチェックが入るだろうと思ったんですが、やっていく中で自分なりのピカードがつくれればいいと思って始めました。だから、そんなに吉水さんのピカードを意識してつくったということはありませんでした。

岸川
周りのレギュラーの方は、大塚明夫さんにしても大塚芳忠さんにしても、1年やられてきています。すでにあるチームワークに後から入っていくとき、少しやりにくいことはあったんですか。

麦人
それはなかったですね。ほかの仕事やなんかでみんな知ってる連中ばっかりだったし。皆さん、レギュラーメンバーが優しい方でしたから(笑)。いろいろ気を遣ってくれたたのかもしれないけど、自分としてはそんなに緊張して入ったということはありませんでした。もちろん、役に対してどうつくり上げていくかという緊張感はあったけれど、スタジオのムードとして、1年やってきた人の中へ入っていくときに「やつらに何をされるのかな……」なんてものは一切ありませんでした。

岸川
最終回を録り終わった後、放映権がテレビ局にあってオンエアされていなかったパイロット版(第1話「デネブ星の法廷」)を放送用に皆さんでアフレコされましたね。普通だったらパイロット版は一番最初だから、俳優さんにしても演技はまだ慣れていなかったり、キャラクターをつかんでなかったりということが多いはずです。
例えば大塚明夫さんは「ジョナサン・フレイクスっていうのは、かなりナンだなあ。おれは助けてやっている」みたいな話を冗談でおっしゃっていましたが、本放送が終わった後にパイロット版をアフレコされたときの印象って、何かありますか。

麦人
僕はそれまでつくってきた自分なりのピカードのキャラクターをやりました。それがよかったのか悪かったのかはわからないんですが。向こう側はたぶん、一番最初につくったころのものになるわけでしょう。でも、そんなに違和を感じてやった記憶はないんです。見た視聴者の方がどうだったかはわからないんですが。

岸川
麦人さんの最新作の「スタートレック」というのは、今度DVDが出る「ファースト・コンタクト」の特別版になります。

麦人
その前が「ネメシス」です。

岸川
「ファースト・コンタクト」は前にも日本語版を吹き込まれていますけれど、今回5.1(チャンネル)で新たに収録されました。淡々と自然にやられているとは思うのですが、演技的なことも含め、前とここが違うんじゃないかという点はありますか。最近やったものとして印象に残っていることや覚えていらっしゃることはありますか。

麦人
やっぱり、今までどおりにやった……(笑)。5.1でこれが見られるんだーっていうものですか。5.1だとどう臨場感が違ってくるんだろうとは考えたけれど、自分がピカードをやる上では、怠惰な話ですが、そんなには気にしませんでした。改めてつくり直すんだからこう変えようという意識はなかったですけれど。

岸川
矢島さんも、去年DVDで、抜けた部分の追加収録をされました。過去に1回アフレコした作品をもう1回やるのは、やりやすいんですか、やりにくいんですか。

矢島
さあ、やりやすいとも言えるし、やりにくいとも言えますね。つまり、35年前の声が聞こえてくるわけです。35年たって今の声。これは明らかに違うんです。僕はよく「矢島さん、少しも変わりませんね」とお世辞で皆さんに言っていただくんです。だけれども、恐らくミキサーさんの方は、波形を見ていて、「こんなに違う」って笑ってると思うんです。
つまりそのくらい僕は肉体的に衰えているわけです。しかし、35年前のそのフィーリングに少しでも違和感なく調和するように発声しなければならないことが一つ。だけれども、35年前は非常に未熟で、見ているとお芝居としては不満だらけです。「なんてまあ下手くそなやつがやってんだ」と、今、思いますよ。今、うまくなったという意味ではないんです(笑)。少しはましになったという意味です。
だから、芝居の部分では昔やれなかったことを今ならばもう少し上回ってやれるであろう。そういう意味では、全部録り直したいというのが、私の偽らざる心境です。しかし、トレッキーの方々が楽しむ上においては、35年前の声と今の声を、「お、ここが変わってる!」と発見するのも「スタートレック」を見る一つの楽しさになるのではないか。これも一つのエンターテイメントだというふうに僕は考えてやらせていただいた感じです。
できれば、本当に、私の役者としての良心から言えば、全部やり直したいですね(笑)。やり直させていただけたら、こんなにうれしいことはないです。

岸川
前に久松さんがやったスポックもちょっとやってみたいというお話がありました。例えば新録音でキャスティングもお願いしますということになれば、カークやマッコイはどなたがよろしいでしょうか。

矢島
さあ……。さて、困ったな(笑)。だれがいいだろう。カークはやっぱり、玄田さんがいいんじゃないですか。

玄田
カークですよ?

矢島
うん。玄田さんを見てください。ウィリアム・シャトナーのボリューム感。このボリューム感をまず満たしてくれますよ。やはり身体的な特徴というのは人間にはあるわけです。カークの持っているああいうたくましさや、僕よりも少し線が太いところなどに、いかに僕がついていくかということで、かなりエネルギーを費やしています。ですから、芝居の本質ということと、声的にあのイメージにアプローチするということに、エネルギーが半々くらいかかっています。
だから、自分の声の調子がいいときはいいんですが、声の調子が悪いときにはあのボリューム感を満たせないということがありました。だから、そういう意味からいったら、玄田さんのすばらしい声でカークをやっていただけたら……。そして、スポックは麦人さんがいいと思いますよ。

岸川
スポックは矢島さんが。

矢島
あ、僕がやるのか(笑)。失礼しました。私がやらせていただけるわけですね。

岸川
松岡さんがウラで。

矢島
マッコイは麦人さんに。

岸川
谷口さんにチャーリーを。

矢島
チャーリーというのがいいじゃないですか。今、このメンバーでこれからやりましょう!(一同笑)

矢島 みんなに怒られて(笑)。

岸川
次はぜひこの企画を実現させてほしいと思います。では、「宇宙大作戦」と「新スタートレック」の話は終わります。


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